西蔵七日  SEVEN DAYS IN TIBET

密教キャラ

チベットには、たくさんの仏教寺院、僧院があるが、そこにある仏像の姿は、日本の仏像とはかけ離れている。今回のガイドは、英語のガイドだったので、仏様の名前を聞いても、日本の仏様との関係がほとんどわからない。ということで、帰ってから、いろいろ調べたがまだわからない。かえって大混乱である。
ただ、少しは、わかったので、簡単にご披露したい。これだけ知っているだけで、ずいぶん違う。チベットに行く前に、2-3時間予習をどうぞ。これからも、すこしづづ書き加える予定。

まずは、おおまかなジャンルについての分類です。

お釈迦様のこと。如来とも。如は宇宙の真理のことなので、宇宙から来た絶対的な存在とも言える。菩薩など、仏教の信仰の対象をまとめて仏と呼ぶ場合もある。
菩薩 解脱をせず、いくつもの来世を重ね、解脱に向かう存在者たちを助けるべく、この世に残った仏。如来になる前の仏様とも言える。この世に輪廻転生するため、チベットでは、トゥルク(tulk=転生ラマ)となる。
明王 如来に代わって人々を仏の教えへと導き、救済する。ほとんどが、忿怒の姿をしている。密教においては、菩薩以上に重要。菩薩がやさしく指導するタイプとすれば、明王は、厳しく指導するタイプの仏と言えよう。
天部  (神) サンスクリット語で、デーヴァといい、バラモン教、ヒンドゥ教の神々が仏教に取り込まれた。その結果やたらに数が多くなってしまって、大混乱?
高僧
祖師
お釈迦様の弟子(阿羅漢とか羅漢と呼ばれる)や、その後の宗派の開祖達。チベットでは、ツォンカパ(ゲルク派開祖)や、パドマサンバヴァ(ニンマ派開祖)が超人気。

では、基礎がわかったところで、次に進もう。日本語ガイドの時は、いいが、その他のケース(一人、中国語ガイド、英語ガイド等)は、このコピーをお持ちすることをお勧めする。

ジャンル お名前(サンスクリット名と漢名) コメント
Sakyamuni
(シャカムニ)
釈迦如来
(釈迦牟尼)
仏様。ただ、前世と現世と来世の仏様がいて、釈迦如来は、現世の仏様。紀元前5世紀頃の人。仏様の名には、サンスクリット語から”音写”したものが多い。
Bhausajyaguru
(バイシャジャグル)
薬師如来 疾病を治してくれる。東の彼方の浄瑠璃の世界に住んでいる。左手に薬の壺を持っている。
Amitabha
(アミターバ)
Amitayus
(アミターユス)
阿弥陀如来 極楽浄土の教主である。西方にあると言われ、西方浄土とも呼ばれる。アミターユスは無限の寿命、アミターバは無限の光を意味することから無量光如来、無量寿如来とも呼ばれる。赤い体で、ひざの上で手の平を重ねる。慈悲の仏。
Mahavairocana
(マハヴァイローチャナ)
大日如来 摩訶毘慮遮那如来(まかびるしゃなにょらい)とも呼ばれ、密教の教主。金剛界と胎蔵界にいる。太陽を象徴する。顕教(密教に対する言葉)では、奈良東大寺の大仏の慮遮那仏に当たる。
菩薩 Avalokitesvara
(アヴァロキテーシュヴァラ)
観世音菩薩 観音様は、すべての人々に慈悲を行う菩薩で、ダライラマは観音様の化身である。Sahasrabhuja(千手観音)、Ekadasamukha(十一面観音)ら六観音が有名。頭のてっぺんには、阿弥陀如来を頂いている。
菩薩 Manjusri
(マンジュシュリ)
文殊菩薩 普賢菩薩と共に、釈迦如来の脇侍を務める。左(向かって右)に頭を傾け、右手に無知を切る剣を持ち、左手に経巻を持っているデザインが多い。知恵を司る菩薩。
菩薩 Samantabhadra
(サマンタバダラ)
普賢菩薩 文殊菩薩と共に、釈迦如来の脇侍を務める。象に乗って、合掌している姿が一般的。
菩薩 Ksitigarbha
(クシティガルバ)
地蔵菩薩 お地蔵様。地を象徴している。
菩薩 Maitreya
(マイトレーヤ)
弥勒菩薩 未来に如来になることが約束された菩薩で、いわゆる未来仏。釈迦入滅後の56億7千万年後に再びこの世に姿を現すという。体は、黄色で、前かがみに腰掛けていることが多い。
菩薩 Tara
(ターラー)
多羅菩薩 チベットでよく見るターラー菩薩と呼ばれる菩薩で、観音様の右目から出た涙から白ターラー菩薩(ドルカル)、左目から流れ出た涙から、緑ターラー菩薩(ドルジャン)が生まれた。女尊である。緑ターラーは、両手に蓮と持ち、白ターラーは、合計7つの目を持つ。すごい。
明王 Acabanatha
(アチャラナータ)
不動明王 大日如来の権化。明王の中心的存在。金剛夜叉明王、降三世明王、軍茶利明王、大威徳明王と合わせ、五大明王と呼ぶ。
明王 Yamantaka
(ヤマーンタカ)
大威徳明王 水牛の頭を持つ、ゲルク派の守り本尊。邪悪のものたちから仏教を守ってくれる護法神の一人。文殊菩薩の権化でもある。おどろおどろしい姿をしている。
Kalachakra
(カルチャクラ)
時輪金剛 密教が達した最高の教義(タントラ)である時輪(Wheel of Time)を表す神。男尊と女尊が抱き合った父母神の姿をしているが、訳がわからない。修行が足りないと言われればそれまでだが。
Mahakala
(マハーカーラ)
大黒天 破壊を司る。大日如来の化身とされる。インドでは、シヴァ神だが、日本では大黒様になってしまっている。不思議だ。
Mahasri
(マハーシュリ)
吉祥天 もともとは、ヒンドゥー教のラクシュミーなのだが、チベットでは、バンデン・ラモと呼ばれるとんでもない形相の女神になっている。歴代ダライラマの守り本尊である。なぜ、こんなに違うのか。おまけに仏教では、毘沙門天(クベーラ)の妻とされるが、ラクシュミーは、ヒンドゥ教では、もちろんシヴァ神の妻である。ごちゃごちゃになってしまったとしか思えない。
Sakrdevanamindra
(シャクラデーヴァーナーンインドラ)
帝釈天 須弥山の頂上で、三十三天の筆頭として、仏教の教えを守る。インド神話のインドラに当り、四天王を従えている。
Brahman
(ブラフマー)
梵天 すべてのものを生み出す創造神。開蓮華、水瓶、戟を持っている。蓮の上や、鵞鳥の上に敷かれた蓮に座る。帝釈天や四天王が欲界にいるのに対し、すでに悟りを開いている。
Yama
(ヤマ)
閻魔天 エンマ大王。水牛にまたがって、手には棒と縄を持っている。天界にいたが、なぜか地獄の王となり、死者を地獄に送る存在となった。

(護法神)
Dhrtarastra
(ドリタラーシュトラ)
持国天 四天王の一人。東を守る。白い体をしており、何故か琵琶を奏でる。

(護法神)
Virudhaka
(ヴィルーダカ)
増長天 四天王の一人。南を守る。五穀豊穣の神。青い体をしており、太刀を持っている。

(護法神)
Virupaksa
(ヴィルーパークシャ)
広目天 四天王の一人。西を守る。鋭い目で、世界を監視している。赤い体で、右手に仏塔、左手にヘビを持つ。

(護法神)
Vaisravana
(ヴァイシュラーヴァナ)
毘沙門天 四天王の一人。北を守る。黄色い体をしている。護国と財宝の神。多聞天とも呼ばれ、七福神の中にも入っている。インド神話では、クベーラという魔族だという。インド、チベット、中国、日本と、パズルの世界である。
高僧
祖師
Tsongkhapa
ツォンカパ
ツォンカパ 1357-1419。ゲルク派の開祖で、ジェ・リンポチェと呼ばれる。アムド出身で、マンジュシュリ(文殊菩薩)の生まれ変わりとされ、後に、ダライ・ラマ1世に位置付けられた。
高僧
祖師
Padmasambhava
パドマサンバヴァ
パドマサンバヴァ 8世紀に、ニンマ派を開いた。グル・リンポチェと呼ばれる。アヴァロキテーシュヴァラ(観音菩薩)の生まれ変わりとされ、チベットの王に請われて、インドから来訪。ボン教とチベット仏教の融合を図った。
高僧
祖師
Atisha
アティシャ
アティシャ 982-1054。ゲルク派の前身であるカダム派の開祖。カーラチャクラタントラをべンガルから、チベットに伝えた。
高僧
祖師
Marpa
マルパ
マルパ 1012-1097。ナロパ(Naropa)の弟子の中で、一番高名。仏典をチベット語に翻訳し、カギュ派を起こした内の一人。ミラレパ(Milarepa)の師。
高僧
祖師
Milarepa
ミラレパ
ミラレパ 1040-1123。マルパの弟子で、多くの歌を詠んだ。カギュ派の開祖の一人。

チベット仏教(Tibetan Buddhism)の4大宗派については、本編でも触れたが、ここで簡単にまとめてみた。受験問題には出ないので、暗記する必要はない。日本の宗派よりも、少なくて覚え易い?

宗派 創始者 コメント
ニンマ派
(Nyingmapa)
紅帽派とも呼ばれる。
グル・リンポチェであるパドマサンバヴァ(Padmasambhava=
Guru Rinpoche)
最も古い宗派。8世紀ころインドの行者であるパドマサンバヴァにより開かれた。インド仏教の影響を大きく受けており、ボン経の影響も受けている。サムイェ寺が有名。現在の精神的指導者は、キャプジェ・ペノル・リンポチェ。
カギュ派
(Kagyudpa)
マルパ(Marupa)とミラレパ(Milarepa) 仏教翻訳家であったマルパ(Marupa)と、その弟子の神秘思想家兼吟遊詩人であるミラレパ(Milarepa)が11世紀に開いた。マルパは、意識を、天国や他人の身体にトランスポートする術を学んだと言われる。密教的色彩が強く、転生活仏制度を作り上げ、その一派であるカルマ=カギュパは、17世紀まで、政治的に重要な役割を果たした。
サキャ派
(Sakyapa)
クンチェク・ギェルポ 吐蕃王朝の末裔クンチョク・ギェルポが1073年にサキャ寺を開山し、元(モンゴル)の庇護を受けて13世紀頃に栄えた。タントラを重視する。現在の精神的指導者は、サキャ・ティジン。
ゲルク派(Gelugpa)
黄帽派とも呼ばれる
ツォンカパ
(Tsongkhapa)
1407年に開かれた。本来の仏教の教えを重視し、政治的な力を得て、ダライ・ラマ(Ocean of Wisdom)、パンチェン・ラマ(Great Teacher)により、チベットを政治的にも支配していくこととなる。セラ寺、テプン寺、ガンデン寺、タシルンポ寺等、現在有名なお寺の多くは、ゲルク派に属している。

Topへ 次ページへ前ページへチベットINDEXへ