西蔵七日  SEVEN DAYS IN TIBET

第七日 (Day7)

いよいよ最終日。西蔵七日目である。朝9時の飛行機のため、ホテルを6時半に出発。8時に飛行場に着く。飛行場は立派なのだが、チェックインカウンターの要領が悪くごった返している(たぶん飛行機に乗ったことのない人も相当いるのだろう。リコンファーム漏れで揉めている人もいる)。それでもどうにかチェックインを済ませ、パンダ君ともお別れ。いろいろ余計に付き合わせたので、少し多めにチップをあげて(といっても大したことはない)、お別れする。来週は、オーストラリア人を連れて、カトマンズに抜けるのだそうである(もちろんガイドをするのは、ネパール国境手前まで)。
空港内も表示がまったく悪く、まごまごしていたら、こっちだと言われ行ったら、いきなり空港内敷地に出て、そこから何の監視もなく、飛行機までとぼとぼ歩いて行った。ハードができて、ソフトが伴わない典型的なケースである。チェックインカウンターの様子から予想されたとおり、大幅に出発が遅れた。

また雲間に頭を出している雪山を眺めていると、あっという間に成都(Chengdu)についた。飛行機出口で、機内食をもらう(前日のラサ行の飛行機が運休となり、朝食がラサに届かず、飛行機内で配れなかったとのことだが、今さらもらってもという感じ)。今回の成都でのガイド(というよりも通訳)は、ゴ(呉)さん。四川の外語大学で、日本語を学んでいる、4年生である。ハルビン出身で、韓国語、中国語の他に、日本語と英語をマスターしようとしている。初日のガイドのキムさんの後輩になる。その風体は、その辺の日本人の遊び好きの女子高校生という出で立ちであり、キムさんとはかなり違う。飛行場で、荷物を預けたり、両替所を探す時に、早速彼女を頼んだ効果が出た。とにかく言葉ができないということは、苦痛である。

まずは、四川といえば四川料理、四川料理と言えば麻婆豆腐ということで、成都の地図に載っていた陳麻婆豆腐店という店に向かう。飛行場から立派な高速道路を飛ばすと、あっという間に市の中心に出る。この店は、ビルの1階にあり、何だと思って入ると、中に立派な看板や能書きを書いた看板が飾ってある。どうもこの店が麻婆豆腐発祥の店らしい。あまりお腹もすいていなかったので、麻婆豆腐とご飯とビールだけ頼む。麻婆豆腐が出てきてびっくり。唐辛子のスープに豆腐が浮かんでいて、ご丁寧にその真ん中に山椒の粉までがてんこ盛りに積んである。ご飯をたっぷり盛って、少量の麻婆豆腐をつけて食べたが、それでも、顔があっという間に赤くなるし、汗はだらだら流れるし、舌はひりひりするし、ビールの味もわからないし。さすが本場と、妙に感動する。”陳麻婆豆腐の素”も売っており、5元 ( 60円くらい ) で購入する。ただし、食べられる麻婆豆腐が作れるかは疑問である。料理の値段は、やたら安かった(一人200円弱)。初日のキムさんの、成都は住みやすい町という言葉を思いだした。ちなみにビールは青島ビールなのであるが、なぜか”純生”というどこかで聞いたことのあるような名前がついていた。



そこから、今日の目的地の都江堰 ( Du Jiang Yan ) に向かう。都江堰は、紀元前306年の漢の時代に、岷江という氾濫ばかりしていた川を、大工事により、灌漑用に流れを変えた施設である。2,300年前の話であるからすごい。今では、ユネスコ世界遺産にも指定され、観光地になっている。ただ、地元の人はあまり行かないのか、ゴさんも初めてということで、インターネットでいろいろ調べてきたようである。

成都から片側3車線の極めて立派な高速道路をひたすら北西へ走り、1時間くらいかけて到着。中に入るときれいに整備された参道があり、漢時代と思われる文官の像が並んでいる。諸葛孔明の像もあった。その先に大きな建物があるが、伏龍寺(Fulong Temple)というお寺らしい。正面にこの大工事の指揮をとったとされる李氏の石像(The Stone Statue of Li Bing)がある。偉そうである。中には、中国要人が来訪した時の写真なども飾られている。失脚した人の写真は絶対ない。ただ、金日成など日本では、考えられない人の写真などはある。
ここから、水を引いてできた内江 ( Inner River )と呼ばれる川を見下ろせる。当時の工事の様子なども展示されており、いかに大工事であったが、わかるように工夫されている。
そこから、川沿いに歩いてつり橋を渡ると、トラムバスの乗り場があり、疲れた人は、その先トラムで行けるようになっている(片道10元。往復で買うと安いのだが(15元)、片道ずつ買ったため、往復20元になってしまった)。川を見ていると、水を単に引いただけではなく、流れの速さもうまく調整できるよう考えられていることがわかる。トラムを降りたところは、外江と内江の分岐点で、外江(岷江)が、いかに大きな流れであったかがわかる。そこから結構大きなつり橋があり、その先の山の上に、李父子を祀った二王廟(Erwang Temple )と呼ばれる建物がある。登ろうと思ったら、結構時間がかかることがわかり、断念する。ここで、ゴンカル空港の手際の悪さの影響が出てしまった。


そこから成都に引返し、成都最大のショッピングセンターを見てみる。ここも、建物は立派だが、中はまだまだであった。まさに、近代化の途上ではある。このショッピングセンターから、飛行場までは比較的近く、いよいよチベット・成都ともお別れである。ただ立派な国内線用空港から、荷物をピックアップしてから、オンボロ国際空港まで、てくてく歩いて行くのには、閉口した。タクシーだとぐるっと遠回りになるというし。この辺が、沿岸の都市と内陸都市との差であろう。



ということで、無事”西蔵七日”と銘打ったチベット旅行は終了した。”西蔵七年”とは比較にならない平凡な旅だったかもしれないが、私には、驚きと発見の連続だった。チベットの自然、文化、宗教、人々、みな忘れられないものである。漢民族の皆さん、チベット民族のアイデンティティー・文化を大切にしてあげてください。

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